ハワイで暮らすなら知っておきたい!アメリカの税金の基礎知識

このコラムでは、ハワイでビジネスをするために欠かせない法人・個人対象の米国税務や会計について、できるだけ分かりやすく解説します。ハワイ進出、さらに米国本土進出を目指す日系企業やアメリカに住む皆様に、東京、ハワイ、西海岸、東海岸とネットワークを持つ米国公認会計士事務所として、お役に立てればと思います。

2016年 2月 22日更新

第2回 : 進出形態の違い

ハワイでビジネスを始めることを決めた後に、まず決めなければならないのが企業の進出形態となります。本格的にビジネスを行う場合の代表的な米国進出形態は、日本企業の支店(Branch)、現地法人設立(Corporation、LLCなど)の大きく二つに分けられるのではないでしょうか。

1. 米国支店の場合

日本の法人がハワイ州に外国法人登録を行い、連邦納税者番号(EIN:Employer Identification Number)やハワイ州納税者番号(Hawaii Tax ID)を取得して活動を行う。この場合、日本法人のハワイ支店という位置づけであるため、会社設立の手間がかからない、事業開始初期の赤字を日本の本店の利益と相殺できるなどの利点があります。しかしながら、訴訟される相手そのものが日本の法人ということになるため、米国での訴訟に本店が巻き込まれる、また、最悪の場合は日本の本店の資産にまで損害賠償の追及がおよんでしまうなどのリスクがあります。

2. 現地法人の場合

現地法人の場合、比較的多い設立形態は、Corporation (株式会社)とLLC:Limited Liability Corporation(有限責任株式会社)となるのではないでしょうか。いずれも米国法人であるために、米国での訴訟のリスクが日本の親会社におよぶ可能性は低くなります。Corporation の場合、米国法人の利益は米国で法人所得税の対象となります。日本の親会社に税引後利益を配当することで、日本に利益還元することができますが、配当が米国源泉所得となるため、日米租税条約を使うなどの方法で、米国での課税を軽減するということになります。これがいわゆる二重課税と呼ばれているものです。Corporationの利益→課税→株主への配当→課税と同じCorporationの利益に2回の課税がされます。この場合のCorporation は、税法上S Corporation と区別してC Corporation と呼ばれますが、これは米国の内国歳入法(IRC: Internal Revenue Code)のSubchapter Cで課税されるCorporation ということで、税法的にはC Corporation と呼ばれます。同様に、S Corporation は、内国歳入法のSubchapter S で規定されています。

LLC の場合は、Corporation としての法人所得税の課税方式を選ばない場合、パススルーと呼ばれている法人所得税の課税方式が適用されます。この場合、連邦法人所得税やハワイ州法人所得税の課税がLLCに対してされない代わりに、 株主に相当するLLCのメンバーに課税がされるということで、前述の二重課税を回避することが可能となります。LLCの利益→非課税→LLCメンバー(株主に相当)へパススルー→課税と課税が1回で済みます。

ただし、日本の税法上パススルー課税方式が認められていないため、日米間での税法の違いによる弊害(例えば、課税所得認識時期が日米で異なるなど)が生じるため、日本法人が子会社現地法人を設立する場合には、あまり用いられていない方法のように思います。設立形態は、LLCでありながら、Corporation と同じ所得税の課税方式を選択するということも可能となります。

[注意] Corporation としての課税やパススルー課税方式は、法人所得税の課税方式についてのみの話であり、会社法上の法人格や、その他の税金(売上税、給与税など)に対しては、パススルーの概念の適用はありません。

補足ですが、Corporation やLLCは、所得税法上パススルー課税方式であるS Corporation としての取り扱いが可能ではありますが、S Corporation の株主には、米国非居住者、会社が株主になることができないため、日本の法人が米国に子会社を設立する場合には、S Corporation の選択肢はないということになります。

まとめ

米国に進出する法人形態は、たくさんの選択肢があるように思いますが、訴訟のリスク、日米での会計・税務の法的な違いからくる弊害などの問題を考えると、Corporation または、LLCで法人所得税課税方式をCorporation 扱いとする形態が現実的なのではないでしょうか。設立形態によって、細かな会計・税務上の取り扱いは異なってきますが、同じビジネス活動をしている限り、設立形態によって、極端に税額が変化するということはあまりないと思います。従って、税金のことばかりで設立形態を選ばず、会社設立を担当する弁護士さんに、ビジネス本来の目的、将来的な展開などを相談して適切な法人形態を選択することが好ましいと思います。

2016年 2月 22日更新

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Columnist's Profile

Partner若菜雅幸 (WAKANA, MASAYUKI)(Nagano Morita LLP)

名古屋工業大学工学部卒業、GE横河メディカルシステム(現GE Healthcare)を経て、2001年に渡米。メリーランド州のローカル会計事務所、永野森田米国公認会計士事務所ロサンゼルスオフィス、同オレンジカウンティオフィス、東京オフィスを経て、2012年よりハワイオフィス勤務、現在同事務所パートナー。ハワイ州、カリフォルニア州、バージニア州公認会計士 (HI, CA, VA CPA)米国税理士(Enrolled Agent)

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