壮絶な歴史を越えて「ハワイの中の日本」を守り続ける、ハワイ出雲大社を訪れてみよう!

1840年代に建てられた石造りの教会や、1900年代初頭にできたヨーロッパ風のオフィスビルなどが建ち並び、歴史的建造物と現代的なビルの対比が面白いホノルルのダウンタウン散策。有名なカメハメハ大王像から、大通りのキングSt.を歩いていくと、異国情緒あふれるチャイナタウンと隣接地を隔てる、ヌウアヌ川が見えてきます。

川沿いの大きな歩道を、山の方向に向かって歩いていくと、見えてくるのが…

真っ白な鳥居が印象的な「ハワイ出雲大社」です。地元の日系人の心の拠り所であり、冠婚葬祭に欠かせない存在であり、そして有名な観光スポットでもあります。初詣には三が日で1万人もの人々が集うハワイ出雲大社を、詳しくご紹介します。

ハワイ出雲大社のはじまり

ハワイ出雲大社は、1906年、広島県で代々神職にあった宮王勝良氏がハワイへ渡り、布教を開始したことが始まりとなっています。当時は、砂糖きびプランテーション事業がハワイの経済を大きく支えていた時代で、1868年(明治元年)の最初の日本人移民約150名が上陸したのを皮切りに、ハワイ出雲大社が開設される頃までに、約15万人もの日本人がハワイへと渡っていました。日本人移民は、広島・山口といった西日本出身者が多数を占めていたことから、彼らにとっても馴染みのある、島根県にある出雲大社の分院として、ハワイでの開設が決まりました。1907年には社殿が完成し、1922年には現在の大社造りの社殿が完成しました。

最初に社殿が設けられたのは、現在の社殿の場所から直線距離にして200m程北側。大通りのキングSt.とベレタニアSt.の合流地点の少し山側で、ホノルル港からも近い場所になります。1900年代初頭には日本人が数多く住んでいた所で、新たに港に到着した日本人移民を迎える、日本人経営の旅館や飲食店も多数あったことから、この地に社殿を設けることとなりました。

壮絶な歴史を持つ出雲大社

1906年の開設以来、多くの日系人を支え続けたハワイ出雲大社は、1941年12月の日米開戦により全活動を休止させられ、社殿も政府に没収されてしまいます。そして、神職やその家族は拘束され、社殿は管理者を失いました。

終戦後、仮社殿を設置して再び宗教活動を開始し、ハワイ出雲大社の復興に向けて嘆願書が作成されて以降、10年間にも渡る裁判に勝訴。社殿の復元が決まり、ヌウアヌ川のほとり、現在の場所に移転し、1969年の初詣から今日に至っています。かろうじて残されていた初代の屋根や柱なども、新たな社殿に活用されています。

歴史に触れたところで、それでは早速、鳥居をくぐり、参拝いたしましょう。

参拝の手順

島根県の出雲大社と同じ、白い鳥居が迎えてくれます。鳥居の先は神聖な場所ですので、軽くおじきをし、心を引き締めて通りましょう。鳥居をくぐると、すぐ右手には、身を清めるために手を洗う手水舎(てみずや)があります。

近づくと自動で水が出るようになっており、ペーパータオルも常備されています。しっかり手を洗い、心身共に清らかな状態になりましたら、社殿へと参りましょう。

立派な社殿の堂々たる姿が目の前に。それでは、階段を上り、鈴を鳴らしましょう。

そして、お賽銭をお供えします。神社とはいえ、場所はハワイですので、お賽銭はアメリカドルにいたしましょう。

【拝礼の仕方】 「二礼・四拍手・一礼」

神社でのお参りの際は、通常「二礼・二拍手・一礼」ですが、出雲大社の場合は「二礼・四拍手・一礼」となります。二度お辞儀をし、四回拍手を行い、祈りを捧げ、最後に一礼します。

神聖な空気に包まれている社殿。日系人が多く住むハワイにおいて神社の役割は大きく、結婚式、七五三、厄除祓いなど、ハワイ出雲大社でも日本と同じように、様々な祈祷が行われています。

ハワイは映画やドラマ撮影が頻繁に行われることから、撮影に関する方々への祈祷が行われることも。また、ハワイの代表的なスポーツイベント「ホノルル・マラソン」の前には、社殿前にて、完走お祓いも実施しています。

完走お祓い

2022年12月9日(金)、10日(土)
午前9時~午後3時 予約不要

それでは、社殿でのお参りが終わりましたら、左手の駐車場を挟んで向かい側にある、お守り・お札の授与所に行ってみましょう。

こちらでは、御朱印の受付を行うと共に、お守りやお札などを受けることができます。

お守りには、Happiness(幸福)、Business(事業繁栄)、Safe birth(安産)、Water safety(水難除け)他、縁結び、こどもまもり、交通安全など種類も豊富で、個人の願いに合わせて、様々な種類が用意されています。日本人観光客は、英語が書かれたお守りを求めることが多いそうで、地元の人々は、日本語で書かれたお守りを求める傾向があるそう。

ハワイ出雲大社の「交通安全」のお守りを付けている車は、ホノルル市内でもよく見かけます。

毎年多くの人々が集まる初詣

ハワイ出雲大社にとって最も忙しくなるのが、やはり「初詣」の時期。お参りに訪れる方が川沿いに大行列をつくる様子は、毎年注目されています。参拝後には、御神酒(おみき)やキャンディーが振る舞われます。

初詣・開門時間

1月1日 午前0時~午後5時
1月2、3日 午前7時~午後5時
1月4日以降 午前8時30分~午後5時

お正月の3日間で、1万人を超える方が参拝に訪れるというハワイ出雲大社では、お守りを準備したり、門松などの飾り付けを行うボランティアの方を募集しています。観光客でも受付可とのことですので、ご希望の方はお問い合わせください。(お問い合わせはこちらから

お話をお伺いしました宮坂純 神職

2023年には鎮座117年となる長い歴史の中で、ハワイに住む人々の心の拠り所であり続け、また、観光スポットの一つとして、多くの観光客の願いにも添い続けてきたハワイ出雲大社。その白い鳥居をぜひ、くぐってみてはいかがでしょうか。

ABOUT WRITER
さゆり ロバーツ

東京生まれ。英会話講師を経て、2006年より「ワイキキ・ダウンタウン歴史街道ツアー」の主宰者、および、ハワイ州観光局公認講師として、ツアーや講演活動等を行う。テレビやラジオ、雑誌等、メディア出演多数。趣味は旅行とカフェ巡り。