ホノルルにあるアレバ・ハイツ(Alewa Heights) の高台に、夏の家ティーハウス(Natsunoya Tea House)というローカルの間では有名な老舗のバンケット施設があります。日本文化にルーツを持ちながらも、地元の人々の暮らしに深く溶け込み、世代を超えて愛されてきたこの場所をご紹介したいと思います。

アレバ・ハイツの高台に建つ、夏の家ティーハウス
かつてここには、1921年に日系人の集いの場として始まった日本茶屋「春潮楼(しゅんちょうろう)」があり、日系人の集いの場として親しまれていました。真珠湾を見下ろす丘の上という立地から、戦前には日本総領事館の書記官(実は海軍のスパイ)である吉川猛夫が訪れ、二階の大広間から望遠鏡でアメリカ軍の動向を日本へ報告する諜報活動をしていたのだとか。戦後、春潮楼は没収され一度は姿を消すのですが、1956年に名前を新たに「夏の家」として生まれ変わります。

2階の大広間から見えるパールハーバー(右)とホノルル市街(左)の様子
日本家屋を改装してつくられた宴席は、家族の集まりや法事の会場として利用され、次第に地域コミュニティの拠点へと発展していきます。現在のティーハウスにもその精神は受け継がれていて、人生の節目を祝う文化が根付いているハワイでは、なくてはならない存在となっています。例えば、赤ちゃんの誕生を前に、家族や友人がギフトを持ち寄り、未来のママを囲んで祝福するベイビー・シャワーや、子どもの1歳の誕生日に大人数でパーティを開き、盛大に成長を祝うハワイらしい行事として欠かせないファースト・ルアウ。さらにローカルの日系コミュニティではYAKUDOSHI(厄年)や KANREKI(還暦)などのお祝いも盛ん。夏の家では、10名ほどの家族の集まりから100名規模の宴会まで、幅広く対応できる大小さまざまな個室を完備しているので、家族の成長や健康に感謝し、親族が集うニーズを満たす場所として、長年重宝されてきました。

以前は畳敷きだったお座敷にもテーブルと椅子が設置されています
夏の家で提供されるローカルスタイルの和食も人気なのですが、日本からの観光客でも利用することができるのが、1階のキッチン横にひっそりと佇む寿司バー。ローカルの寿司好きの間では「穴場」として評判で、新鮮なネタをシェフのショーさんが握るおまかせ寿司は一人当たり90ドルと、比較的リーズナブルな価格設定も魅力です。

寿司バー入口の壁には夏の家の歴史を感じさせる写真がたくさん飾られています
人生の節目を丁寧に祝う島・ハワイのローカル達にとって夏の家は、家族の絆が深まり、思い出が積み重なっていく場所。このティーハウスを支えているのが、現オーナーのローレンス・フジワラ氏で、1996年に先代から引き継いで以来この場所をずっと守ってきました。そしてまた、次の世代へのバトンもすでに動き始めていて、4代目となる息子のマイカさんは、サンフランシスコでの生活を経てハワイへ戻り、家業を継ぐ決意を固めたそう。これからも、フジワラ・ファミリーの手によって歴史を受け継ぎながら、新しい未来へと歩み続けていくことでしょう。

今も昔もローカル日系コミュニティの中心的存在
ローカルが集い、人生の節目を祝ってきた夏の家ティーハウス。次のハワイ旅では、こんな暮らしに根付いた場所を訪ねてみるのもおすすめ。地元の人々のリアルな暮らしや、文化をもっと身近に感じられる、特別な時間が待っているはずです。

正面玄関右手のショーケースの中には、現オーナーのお母様エミコさんが、京都から持参したという振袖が飾られています

