めったに見られない貴重な儀式も!ハワイの伝統文化を伝える「アロハフェスティバル」

現在は目にする機会がほとんどない、伝統的な王族の装いも見られる貴重なイベント「アロハフェスティバル」。(写真:Hawaii Historic Tour)

ハワイの伝統文化を間近に感じられるお祭り―それが、毎年9月に開催される「アロハフェスティバル」です。ハワイの文化を後世に永く伝える目的で、「アロハウィーク」という名で1946年に始まったこちらのイベント。ハワイアン・ミュージックやフラが披露されたり、伝統儀式の再現やパレードなども大々的に行われてきました。1991年にアロハフェスティバルと名を変え、現在は3週間に渡り開催されています。主な舞台となるワイキキに、およそ10万人* もの観客が集まるというこのフェスティバル。長い開催期間中に、どのようなことが行われるのか、詳しくご紹介します。

* アロハフェスティバル実行委員会発表

フェスティバルで行われる3つの大きな催し物
1. 叙任式

フェスティバルは「叙任式(Royal Court Investiture)」から始まります。毎年、王族の役にあたる人々をハワイアンの血を引く人々の中から選出し、王・王妃・王子・王女が決まります。式が始まると、まず、前年のフェスティバルで「王族」に任命された人々が、伝統的な装いで入場します。

お付きの人々を従え、堂々とした姿で入場する前年の「王族」。(写真:Hawaii Historic Tour)

多くの観客の前に「王族」とお付きの人々が揃うと、フラダンサーが登場します。フラは「王族」に捧げるために踊られるものなので、ダンサーは観客に背を向けて踊ります。これは、なかなか目にすることがない光景です。

観客に背を向けて踊るという、珍しい光景が広がる叙任式。(写真:Hawaii Historic Tour)

踊りが終わると、前年の「王族」は退出し、新たに選出された「王族」が登場します。

新たな「王族」たちは、伝統的な装いを身に着ける前の状態で登場。(写真:Hawaii Historic Tour)

新たな「王族」が登場すると、古代の王族が身に着けていたケープ、首飾り、ヘルメットを男性が、髪飾りと首飾りを女性が身に着ける儀式へと入ります。

最も位の高い王族が身に着けた、足首までの長いケープ。(写真:Hawaii Historic Tour)

古代では、ケープとヘルメットは、植物の繊維を編んで作った下地に、大量の鳥の羽をくくりつけて作られていました。鳥から数枚の羽を取り、その鳥は自然に帰すという方法で羽を採取。長いケープになると数万枚の羽を用意する必要があったという、気の遠くなるような作業の末に完成したケープは、儀式や戦争に出向く際に、王族が身に着けたものでした。

カメハメハ大王の姿を彷彿とさせる姿となった、新たな「王」。(写真:Hawaii Historic Tour)

「王族」の装いが完成すると、数々の贈り物が、高官にあたる役の人に渡されます。贈り物には、お菓子の詰め合わせやレイといった物のほか、歌や踊りなどが贈られることも。一通りの儀式が終了すると、伝統的な音楽や踊りが披露される場所へと、全員が移動します。

新たな「王族」を迎え、ステージでは古典的な音楽や踊りが披露されます。(写真:Hawaii Historic Tour)

新たな「王族」と共に、多くの観客が伝統的なステージパフォーマンスを楽しみ、アロハフェスティバルの開会となります。

2. ワイキキ・ホオラウレア

2024年に70回目を迎えた、大規模な「ホオラウレア(パーティー、祝賀会)」。午後6時から9時30分の間、ワイキキのメインストリートであるカラカウア通りの一部を歩行者天国にし、両サイドにズラリとブースが並びます。

飲食店のブースでは、ハワイのローカルフード「フリフリチキン」(クルクルと回しながらローストしたチキン)も出来立てが手に入ります。(写真:Hawaii Historic Tour)

大通りは、買い物や食べ歩きを楽しむ人々でギッシリ!(写真:Hawaii Historic Tour)

ホオラウレアには、飲食店を含め105店舗が出店(2024年)。ハワイ産のものが数多く売られており、観光客の方には、ハワイ土産を買うにも絶好のチャンスです。

ハワイ産のハチミツや、地元で採れた果物を使った商品も。(写真:Hawaii Historic Tour)

ホオラウレアでは、ステージが2か所に設けられ、ハワイの有名アーティストのパフォーマンスやフラなどが、次々と楽しめるようになっています。

ハワイアン・ミュージックを聴きながら、買い物を楽しめます。(写真:Hawaii Historic Tour)

3. フローラル・パレード

アロハフェスティバルを締めくくるのは、76回目(2024年)となるフローラル・パレードです。その名の通り、ハワイらしく南国の植物がふんだんに使われたパレードで、山車のみならず、パレードに登場する人々も、花々で美しく飾られます。横に長いワイキキの、端から端までにあたるアラモアナ・パークからカピオラニ・パークまで、3時間かけてパレードは行われます。

賑やかな音楽の生演奏と共に、山車の上でフラを披露するダンサーたち。(写真:Hawaii Historic Tour)

フェスティバルの開会の際に登場した「王族」も、堂々とした姿で登場します。

古代の装いと、現代的なビルのコントラストが興味深いパレード。(写真:Hawaii Historic Tour)

さらに、長いスカート状の「パウ」を身に着けた女性騎手「パウ・ライダー」たちも、鮮やかな衣装で人々を魅了します。

パウ・ライダーは馬を上手に操り、道路の両脇に集まる観客の目の前にまで近づいてくれます。(写真:Hawaii Historic Tour)

パウ・ライダーも、1800年代中頃から始まった、女性による乗馬の際の伝統的な装いというハワイの文化を伝える役目を果たしています。ハワイ各島を代表するライダーが、各島のテーマカラー(ハワイ島は赤、オアフ島は黄色など)で美しく着飾っている姿も、パレードで注目したいポイントです。

パレードには、王国時代から続く「ロイヤル・ハワイアン・バンド」や、地元の高校生によるブラスバンドの演奏、ハワイらしい絵柄や旗で飾られたビートル(ドイツ車)の車列も現れ、パレードを盛り上げます。

どこの大陸・島々からも離れた太平洋の真ん中にあるハワイの島々。イギリス船に「発見」されて以降、長きにわたって独自の文化を築いてきたハワイアンの世界に、西洋文化の波が押し寄せ、ハワイの文化が存続の危機に瀕する場面も多々ありました。自身の文化を守り、称え、誇りをもって後世に伝えたい―ハワイアンの強い思いが込められた「アロハフェスティバル」を、ぜひご自身で体験してみてください。

ABOUT WRITER
さゆり ロバーツ

東京生まれ。英会話講師を経て、2006年より「ワイキキ・ダウンタウン歴史街道ツアー」の主宰者、および、ハワイ州観光局公認講師として、ツアーや講演活動等を行う。テレビやラジオ、雑誌等、メディア出演多数。趣味は旅行とカフェ巡り。