銅像となった王族は何を着ている?ハワイの伝統的な装い、その歴史を詳しくご紹介!

写真: Hawaii Tourism Authority (HTA)/Tor Johnson

ハワイの伝統的な踊り、フラ。歌の歌詞に合わせ、素敵なロングドレス「ムウムウ」を着てエレガントに踊るダンサーの姿…思わず見入ってしまいますね。また、褌(ふんどし)を身に着け、勇ましく踊る姿の男性ダンサーは、ステージをキリッと厳かな雰囲気にもしてくれます。彼らフラダンサーの装いは、ハワイの伝統的な装いを今に伝えています。

写真: Hawaii Tourism Authority (HTA)/Nicholas Tomasello

それでは、ハワイの伝統的な装いとはどういったものなのか、銅像にも登場してもらいながらその歴史をご紹介いたしましょう。

古代ハワイでは、どんな「布」が使われていた?

現代では、綿や絹、ポリエステルなど、服の素材も様々ですが、外国との接触以前の古代ハワイでは、衣服に使われる布として「カパ」と呼ばれるものが使われていました。カパは和紙の原料にもなる植物「ワウケ(こうぞ)」の茎の繊維から作られたもので、完成品の手触りはまさに和紙のよう。

まだ若い1m程のワウケ。15m程の高さにまで育つ。写真: Hawaii Historic Tour LLC提供

3m程の高さに成長したワウケの茎の中から繊維を取り出し、水に長時間漬けた後、木の棒で叩いて伸ばしていき、繊維を重ねて叩き…を繰り返して、大きな布を作り上げます。

写真: Hawaii Tourism Authority (HTA)/Dana Edmunds

乾燥させた後、植物から作った染料や、竹から作ったスタンプで模様をつけていきます。

写真: Hawaii Tourism Authority (HTA) / John Hook

こうして出来上がったカパを使い、男性は褌、女性は腰から膝までの長さの巻きスカートを作り、身に着けていました。ハワイは夜間や冬場、さらに高度によっては気温が下がるので、肩から羽織るケープにあたる「キヘイ」も使われました。

キヘイを身に着けたカメハメハ大王の妃、カアフマヌ王妃の姿。写真: Hawaii State Archives

カパの褌や巻きスカートは、身分の違いによらず、全ての人々が身に着けていたもので、王族はそれらに加え、鳥の羽でできたケープやヘルメットなどを、公の場や戦場で身に着けていました。その装いは、カメハメハ大王の銅像が今に伝えています。

ホノルルのダウンタウンにあるカメハメハ大王像。鳥の羽でできたヘルメット、ケープ、肩にはサッシュ、そしてカパで作られた褌を身に着けている。写真: Hawaii Historic Tour LLC提供

ハワイアンの装いが劇的に変わった1820年代

基本的に、古代ハワイアンの装いは肌を大きく出した状態でしたが、その装いに大きな変化がもたらされたのは、1820年にハワイに到着した、アメリカ人宣教師たちの働きかけによるものでした。アメリカ北東部からハワイへと向かったアメリカ人たちは、寒い地域に暮らす人々だったために、女性は特に、ピタッと体に密着した長袖の上着にロングスカートという装いで、宗教的な理由で肌を極力隠す服を身に着けていました。

ハワイ島ヒロに住んだ宣教師一家。温暖なハワイでありながら、寒冷地と同じ服装で過ごしていた。写真: Hawaii State Archives

初めて見る洋装に、ハワイの女性王族が注目。自分のためにドレスを作ってほしいと、宣教師の妻たちに申し出たといいます。当時、とてもふくよかな体形であったハワイアンのために作られたのが、ゆったりしたワンピースの「ホロク」というドレスでした。

「ホロク」を身に着けたハワイアンの女性たち。写真: Hawaii State Archives

さらに宣教師たちは、ハワイアンに肌を隠すための服を着るよう訴え続け、次第にホロクがハワイアンの女性に広く着られるようになっていき、さらにそのデザインも、後ろになびくトレーンが付くなど、豪華さが加わっていきました。ハワイ王国最後の女王となったリリウオカラニ女王の銅像は、ホロクを身に着けた姿となっています。

イオラニ宮殿と、隣接するハワイ州庁舎の間にあるリリウオカラニ女王像。写真: Hawaii Historic Tour LLC提供

ホロクの発明と同時に、下着として白地の「ムウムウ」が作られ、ホロクの下に着られていました。後にこのムウムウが、外出着としても使えるようなデザインに進化し、現代のハワイアンドレスとして定着しています。

アロハスタジアムの駐車場で開催される「スワップ・ミート&マーケットプレイス」 にて出店しているドレス専門店の様子。写真: Hawaii Historic Tour LLC提供

外国との交流が始まったハワイは、絹や綿など、より丈夫な布が上陸したことで、カパを使った伝統的な装いは次第に姿を消していきますが、カパは伝統工芸として、現在もその作り方や作品は大切に保存され、人々に伝える活動が行われています。また、宣教師の妻たちによってもたらされたドレスは、フラダンサーはもちろん、ハワイのホテルやレストランで働く方々、ハワイの文化に関わる活動をされる方々などに、現代でも広く着用されています。ハワイの地で生まれたムウムウを着て、銅像が伝える伝統的な装いを見てみるなど、ハワイの街歩きをぜひ楽しんでみてください。

ABOUT WRITER
さゆり ロバーツ

東京生まれ。英会話講師を経て、2006年より「ワイキキ・ダウンタウン歴史街道ツアー」の主宰者、および、ハワイ州観光局公認講師として、ツアーや講演活動等を行う。テレビやラジオ、雑誌等、メディア出演多数。趣味は旅行とカフェ巡り。