古き良きハワイの味を今に伝える カリヒの老舗「アリシアズ・マーケット」

1949年、レイモンド&アリシア・カム夫妻がカリヒのモカウエア・ストリートで始めた小さな「ご近所マーケット」がスタート

ワイキキの喧騒から車で20分ほどの場所、観光客の姿がほとんど見えなくなるカリヒ地区に、70年以上にわたり地元の人々の胃袋を支え続けてきた名店があります。それが「 Alicia’s Market(アリシアズ・マーケット) 」です。

このままずっと残っていて欲しい「古き良きハワイ」を伝えるレトロな看板

派手な看板も、SNS映えを狙った演出もありません。でも逆に年代物だと一目でわかる古ぼけた看板の感じがまた味わい深いのです。昼前になると、作業着姿のローカルや常連客が次々と列をつくる。その光景こそ、この店が“本物”である証なのです。

そんな地元民に圧倒的な人気を誇る老舗マーケットをご紹介します!

1949年創業、家族経営が育んだ「町の台所」

人気のポケ・ボウルのほか、ラウラウやカルアポークなどのハワイアンフードのプレートランチもそろう

アリシアズ・マーケットは1949年、アリシア・カム夫妻によって創業されました。もともとは近隣住民のための小さな食料品店で、日々の食卓を支える「町の台所」として、自然と人が集まる場所になっていきました。時代が変わっても、家族経営というスタイルは変わっていません。現在は3代目が引き継ぎ営業を続けています。レシピも、味付けも、接客の距離感も、世代を超えて受け継がれてきたものです。「特別なことはしていない。ただ、いつもと同じ味を出しているだけ」そんな姿勢が、結果として70年以上の信頼を築いてきました。

火災を乗り越えて戻ってきたのは“いつもの味”

冷蔵ショーケースの中にはバリエーション豊かなアヒ・ポケをはじめ、ムール貝やタコのポケ、貝とイカのミックス系ポケ、ハワイ伝統のマリネサラダのロミ・オイオ、ポイ、オーシャン・サラダなどがずらりと並ぶ。

2018年、アリシアズ・マーケットは火災に見舞われ、一時は象徴的だったカウンターと厨房を失いました。それでも店は閉店しませんでした。規模を縮小しながら営業を続け、常連客は変わらず足を運び続けました。再オープンの日に戻ってきたのは、新しさではなく「懐かしさ」でした。ポケの並ぶショーケース、肉の焼ける匂い、手際よく注文をさばくスタッフ。地元の人たちが求めていたのは、流行でも変化でもなく、いつものアリシアズ・マーケットだったのです。

【名物その1】ポケは“観光向け”ではなく“生活の味”

アリシアズ・マーケットを語る上で欠かせないのが、ショーケースにずらりと並ぶポケです。ここでは、ポケはごちそうというより日常食として親しまれています。

他店と比べるとポケの切り口が小さめで食べやすいのが特徴。

定番中の定番

●Wasabi Masago Ahi(ワサビ・マサゴ・アヒ・ポケ)

ピリッとした辛味とプチプチとした食感が特徴で、初めての人も結局この味に戻ると言われています。

●Limu Ahi Poke(リム・アヒ・ポケ)

海藻風味の伝統的なハワイアンスタイルです。

●Spicy Ahi Poke(スパイシー・アヒ・ポケ)

ローカル好みのしっかりとした辛さで、白いご飯が止まりません。

味付けは濃すぎず、毎日食べても飽きないこと。それが、観光地のポケ・ボウルとの決定的な違いです。

【名物その2】肉料理が強いのも、アリシアズ流

実は、常連の多くがポケと一緒に必ず頼むのがロースト・ミートです。アリシアズ・マーケットでは、ハワイのローカル食文化に根付いた中華系ロースト・ミートが、今も変わらず親しまれています。

毎日大量に売れるというロースト・ポークは看板メニュー。皮はパリパリのクリスピー&お肉は柔らかくてジューシー!

売上ナンバー1を誇る「ロースト・ポーク&マサゴ・ワサビ・ポケ・ボウル($17.95)」と新メニューの「ハマチ・ネギ&ジンジャー・ポケ」

●ロースト・ポーク

外は香ばしくパリッパリの歯ごたえ&中は驚くほどジューシーで、長年愛されてきた看板メニューのひとつ。

●ロースト・ビーフ

シンプルながら、肉そのものの旨みがはっきりと感じられ、ご飯との相性も抜群。

●ロースト・ダック

中華系ローストの代表格ともいえる一品で、香ばしく焼き上げられた皮と、コクのある肉の旨みが特徴。チャーシューやロースト・ポークと同様に、ハワイのローカルマーケットでは昔から親しまれてきた味で、「今日はちょっと贅沢に」と選ぶ常連が多い。

●ターキーテール

脂の旨さを知るローカルに愛される、通好みの一品。

サイド・メニューに宿る、昔ながらのハワイ

脇役に見えるサイド・メニューにも、アリシアズ・マーケットの歴史は詰まっています。

五香粉風味が香り、食べだしたら止まらなくなる!小腹が空いた時にもビールのアテにもピッタリ♪

●マカロニ・ポテト・サラダ(ロコの大好物!)

●ロミ・オイオ(白身魚の淡白な旨み&玉ねぎのシャキッとした食感が抜群!)

●ポイ(ハワイアンフードの代表格!ハワイでは離乳食としても大活躍)

●茹でピーナッツ(五香粉風味でやみつきになる味)

●ドライド・アク(カツオのジャーキー)

どれも派手さはありませんが、食卓にあると不思議と落ち着く味。「ハワイの食文化は多国籍」と言われますが、ここではそれが自然な日常として存在しています。

観光客向けではないからこそ、価値がある

次から次へとやって来るお客さん。そのほとんどの人が購入するのが人気ナンバー1メニューの「ロースト・ポーク&ポケ・ボウル($15.95〜$17.95)」。

アリシアズ・マーケットは、決して観光客向けに最適化された店ではありません。店内では英語が飛び交い、注文もスピーディーで、説明は最小限。それでも訪れる価値があるのは、ここに「古き良きハワイの今」があるからです。変わらない味、変わらない人、変わらない空気感が、今も息づいています。ハワイの本当の食文化を知りたいな、と思ったら、まずはワイキキを離れ、ローカルタウンへ出かけてみてはいかがでしょう?(※カリヒ地区に行く場合は、治安に配慮して昼間限定で!)。そこには、今も静かに続く「地元の名店」があります。

甘味とスナックに宿る、もうひとつのローカル文化

古き良きハワイ時代のロコにとって子供時代の思い出といえば「クラックシード」。日本で言うところの駄菓子のような存在なのだそう。

アリシアズ・マーケットの魅力は、ポケやロースト・ミートだけではありません。店の一角に目を向けると、ハワイの子ども時代そのものとも言えるアイテムが、今も当たり前のように並んでいます。それが、スラッシュとクラックシードです。

ローカルが愛してやまない「スラッシュ」という存在

ハワイで育ったローカルにとって、スラッシュは単なる冷たいドリンクではありません。学校帰りやビーチのあと、親に連れられてマーケットに来た時など、必ずプラスチックカップに注がれた色鮮やかなスラッシュの記憶があります。アリシアズ・マーケットでは、そんな昔ながらのスラッシュ文化が今も健在です。

他店でもスラッシュは買うことができますが、ここはフレーバーのラインナップが「ハワイのロコ」目線!

ローカル心をつかむフレーバー

●リーヒンムイ味

甘さと塩気、酸味が混ざり合った、ハワイならではのクセになる味です。

●リリコイ味

トロピカルで爽やか。南国の空気をそのまま凍らせたような定番です。

●グリーンリバー味

ハワイのローカルソーダを象徴する、あの鮮やかな緑色が印象的です。

「これがあるだけで、この店は信用できる」と話すローカルも少なくありません。

流行のボバやクラフトドリンクではなく、あえて昔のままであること。それが、アリシアズ・マーケットのスラッシュが今も支持され続けている理由です。

クラックシードが語る、ハワイの“おやつ文化”

数あるクラックシードの中でも圧倒的に人気なのはリーヒンムイ味。ロコはとにかくリーヒンムイが大好き。

もうひとつ見逃せないのが、種類豊富に並ぶクラックシードです。梅やドライフルーツをベースに、甘く、酸っぱく、時にしょっぱい味わいは、中国系移民の文化をルーツに持つハワイ独自の駄菓子文化を感じさせます。

アリシアズ・マーケットでは、

●リーヒンムイ・プラム

●シード入りドライマンゴー

●甘酸っぱいドライフルーツ各種

といった、昔ながらのクラックシードを当たり前のように選ぶことができます。袋を手に取り、少しずつつまみながら会話を楽しむ。それは観光体験ではなく、ローカルの日常そのものです。

「食べ物屋」ではなく「記憶を売る場所」

食べ物が美味しいのはもちろんのこと、みんなこのスタッフの笑顔に会いにやって来る。

ポケ、ロースト・ポーク、スラッシュ、クラックシード。一見するとバラバラに見えるこれらは、すべて同じものを指しています。それは、古き良きハワイの生活文化です。

アリシアズ・マーケットは、単に空腹を満たす店ではありません。ここには、子どもの頃の記憶、家族で分け合った味、何十年も変わらない日常が、今もそのまま残っています。

観光地では決して味わえないハワイを知りたいなら、ポケだけでなく、スラッシュを手に取り、クラックシードをつまんでみてください。それこそが、本当のローカル・ハワイなのです。

変わらないことが、いちばんの贅沢

ハワイは常に変化し続けています。新しいホテルが建ち、流行の店が生まれ、景色も食もアップデートされていきます。けれどその一方で、変わらない場所があるからこそ、ハワイはハワイでいられるのです。

ガイドブックには載らない「アリシアズ・マーケット」は、60年以上前からロコに愛される老舗人気店。ハワイリピーターのあなたにぜひ行ってほしいお店。

アリシアズ・マーケットは、その象徴のような存在です。ポケの味も、ロースト・ポークの香りも、スラッシュの色も、クラックシードの並び方も、すべてが「昔からそこにあったもの」として、今も息づいています。派手さはありませんが、ローカルの記憶と暮らしに深く根ざした味が、ここにはあります。

古き良きハワイを知りたい方、そして「今も続くハワイ」を感じたい方は、この店のカウンターの前に立ち、いつもの一品を選んでみてください。それが、アリシアズ・マーケットが何十年もの間、地元民に愛され続けてきた理由なのです。

ABOUT WRITER
yukarinn808

1996年よりハワイ在住、2005年より編集・ライター業務を行うフリーランスライター。趣味はスリフトショップでのお宝探しとハワイ生活のあれこれをブログに書くこと&ディープなハワイを紹介するYouTube制作。