カパフル通りは、ワイキキから徒歩圏内にありながら、どこか観光客向けとは少し違う空気を感じさせるエリアです。レナーズをはじめ、観光客にもよく知られた人気店が点在する一方で、実はローカルの間で高く評価されている、ガイドブックには載っていない一軒もあります。今回は、そんな「ローカルのみぞ知る店」として知られる Guava Smoked をご紹介します。

お店はアラワイゴルフコースの向かい側のビルの2階。入口は裏のCampbell Avenue側に
オーナーのスコットさんは、オアフ島カパフル生まれのカパフル育ち。今店を構えているこのエリアは、彼にとって特別な場所です。幼い頃から、食はいつも身近にありました。週末になると、遊びに出かけるよりも、父親が営んでいたレストランを手伝うのが当たり前。そんな日常の中で、自然と食の世界に親しんでいったそうです。
好奇心旺盛なスコットさんは、卒業後、アメリカ空軍、航空会社のメカニック、そして教師など、様々な仕事を経験します。しかし、「いつか自分で事業をしたい。」という夢がありました。本格的に起業を考えた時、自然に頭に浮かんだのは、やはり少年時代から馴染みのあった「食」の仕事でした。

オーナーのスコットさん(右側)とスタッフたち
スモーク料理をやろうと思った直接のきっかけは、カウアイ島出身の義理の弟の存在だったといいます。狩猟をし、グアバの木で肉を燻す——そんな家庭的なスモークBBQを何度も味わううちに、「これはきちんと形にできるのではないか」と感じるようになりました。義理の弟にレシピを尋ね、10年以上にわたって試作と改良を重ねながら、自分なりの味を作り上げていったそうです。

厳選して仕入れたお肉や魚を約4時間かけて燻しています (Photo credit:Guava Smoked)
そして2011年、ファーマーズマーケットで販売を開始。そこで着実にファンを獲得し、2013年、カリヒに最初の実店舗を構えました。カパフル店がオープンしたのは、パンデミック直前の2020年3月。軌道に乗り始めた矢先のロックダウンでしたが、作業工程の合理化やお持ち帰り用商品の開発などを重ね、店を続けてきたといいます。現在も利益率を極力抑え、「良いものを、適正な価格で提供したい」という思いを大切にしています。

カパフル通りとアラワイゴルフコースが望めるラナイ席
そんなスコットさんの思いが詰まった味を、今はカパフル通りで気軽に楽しむことができます。ということで、今回は実際にいくつかの定番メニューを試してみました。
Guava Smoked の料理を語るうえで欠かせないのが、やはりスモークの存在です。ただし、その主張は控えめ。使用しているのは、スコットさん自身が調達しているストロベリーグアバの木で、カリヒ店にあるスモーカーで平均約4時間かけてじっくり燻されています。カパフル店のレジカウンターには、そのグアバの木が装飾として使われており、店名の由来をさりげなく伝えています。

レジカウンターのベースは、燻製に使われるストロベリーグアバの木で飾られている。
まずいただいたのは、Spicy Pork と Chicken Thigh のミックスプレート。スモークの香りは前に出すぎることなく、肉の旨味を引き立ててくれています。Spicy Porkはこのお店の一番人気メニューだそう。ほのかな甘味を持ちつつ、巧みにスパイスが効いていて、マイルドな辛さです。ビールやワインなど、お酒が進みそうな味付けだと思いました。一方、Chicken Thighは、程よい甘辛の味付けでジューシーな一品。こちらはごはんと一緒にガッツリ食べたい感じです。サイドのマカロニサラダにはわずかにスパイスがかけてあり、良いアクセントになっていました。

メインのお肉かお魚を2種類選べるミックスプレート
もうひとつのミックスプレートは、Butter Fish Collars と Salmon Bellies。中でも印象に残ったのはサーモンで、実はスコットさんの一押しだそうです。脂ののった身に、ほんのり甘辛な味付けがされ、グアバウッドのやわらかな燻香が重なる絶品。スモークでありながらどこか軽やかなのです。バターフィッシュも脂が乗っていて香ばしく美味。どちらの魚も、素材の甘みが非常に引き立っていて、ぜひお試しいただきたい一皿でした。こちらの一皿にはハワイ産の野菜を使ったグリーンサラダを添えて。サイドのサラダはどちらかを選べます。

スモークしたお肉のロコモコは他店ではなかなか味わえない一品
続いて試した Smoked Loco Moco は、ハワイの定番を Guava Smoked らしく仕上げた一品。スモークパティとホワイトグレイビー、そして新鮮なハワイ産の卵の相性がとてもマッチしていました。パティは、スパイシーとマイルドから選べますよ。観光の合間でも、普段の食事としても選びやすいメニューです。どちらもご飯はHapa rice(白米と玄米のミックス)となります。
食事のあとに試したデザートとドリンクにも、この店らしさがよく表れていました。Guava Smoked では、スモーク料理だけでなく、デザートやスラッシュにも本物のグアバが使われているんです。

リアルグアバの香りが広がるSlushとGuava bar
Guava Bar は、グアバの香りが豊かで、中に入ったクルミの食感が素朴な味わいの一品。甘過ぎず、サイズも小ぶりなので、食後でも重たくならず、スモーク料理のあとにちょうどいいバランスです。そして、今回特に印象に残ったのが Guava Slush。グアバの自然な甘みとほどよい酸味が心地よく、暑い日のカパフル散策にぴったりの一杯でした。正直なところ、これだけを目当てに立ち寄りたくなるほど私のお気に入りになり、食後のドリンクという枠を超えた存在に感じられました。
スモーク料理でしっかり満たされたあとに、グアバの風味でさっぱりと締める。この流れまで含めて、Guava Smoked の食体験なのかもしれません。
Guava Smoked では、店内で提供している料理のほかに、冷凍のスモーク食品も販売しています。今回試食はしていませんが、ローカルの間では需要の高い存在です。
カパフル店がオープンしたのは、2020年3月。軌道に乗り始めた矢先にパンデミックによるロックダウンが始まり、店はテイクアウト中心の営業を余儀なくされました。そんな状況の中で力を入れたのが、この冷凍パック商品だったそうです。スモーク料理はもともと下ごしらえに時間をかけているため、冷凍しても品質が落ちにくく、家庭でも手軽に楽しめます。

ローカル達の晩ご飯やBBQパーティーにも重宝する冷凍のお肉やお魚 (Photo credit:Guava Smoked)
また、解凍してフライパンやグリルで焼くだけで食べられる手軽さもあり、自宅で食事をする機会が増えた時期には、多くの人の生活に寄り添う存在となりました。現在も、冷凍スモーク食品は店内で購入でき、地元の人々にとっては、晩御飯のメニューに悩んだ時やストック用としてとても便利な選択肢です。
カパフル通りには、観光客にも知られた有名店が点在していますが、その一方で、地元の人たちの日常にしっかり根を下ろした店が点在します。Guava Smoked は、まさにそんな一軒です。派手な演出や流行を追うのではなく、時間と手間を惜しまないスモーク、適正な価格設定、そして「良いものをきちんと届けたい」という姿勢。その積み重ねが、ローカルから支持される確固たる理由です。
観光で訪れても、在住者として通っても、ここでは“作られたハワイらしさ”ではなく、暮らしの延長線上にある味に出会えます。何を食べるか迷った時、ガイドブックよりも参考になるのは、地元の人が通い続けているかどうか。Guava Smoked が今も支持されていること自体が、この店の価値を何より雄弁に物語っています。

