ハワイで現地の人々に愛されているスイーツの一つに「バター餅」があります。バターと餅という、一見洋と和のミスマッチにも思えるこの組み合わせ。しかしなんと、食べてみると独特の風味と食感がたまらなく美味しいのです。今回は、このハワイのソウルフード、バター餅についてご紹介します。
ハワイで愛されるおやつ、バター餅
ハワイのバター餅の特徴と言えば、もっちもちな食感と口に入れた時に広がるバターやココナッツの豊かな風味!ハワイっぽいけれどアジアンぽくて、どことなく懐かしい感じがする味のスイーツです。
日本でも秋田県名産のバター餅があるようですが、ハワイのバター餅はそちらとは作り方も食感もかなり違います。柔らかくしたお餅に他の食材を入れて形を整える秋田版に対し、ハワイのバター餅は、もち粉、バター、砂糖、ココナッツミルク、卵などの材料を混ぜてオーブンで焼くタイプ。小麦粉でなくもち粉を使っているので、グルテンフリーのお菓子です。
バター餅は、ハワイ文化にしっかり根付いており、地元のスーパーマーケットで販売されてないお店はないくらい。お祭りやホームパーティーなどにもよく登場するのです。では、この独特のスイーツは一体どこから来たのでしょう?残念ながらこれには明確な答えがなく、いくつかの説があります。
ハワイのスーパーはどこでもバター餅が売っている
一つは、日系移民がハワイに持ち込んだ餅文化が元になっているという説。ハワイには19世紀後半から20世紀にかけて、砂糖プランテーションで働くために多くの日系移民がやってきました。日本の伝統的な餅に、ハワイで手に入り易いバターやココナッツミルクなどの食材を加えてアレンジされ、進化していったと言われています。
もう一つは、フィリピンの料理に由来するという説です。ハワイには日系移民が増えたのとほぼ同じ時期に、フィリピンからも移民が多く渡ってきました。彼らが持ち込んだ食文化が現地の食材や他の移民たちの食文化と融合して、バター餅の誕生に繋がった可能性があります。フィリピンにはもち米やココナッツミルクを使った食品が多くあり、ビビンカ(bibingka)というココナッツミルクを使ったフィリピンのスイーツがバター餅に似ていると言われています。
どちらが大きな要因であったにせよ、バター餅はフィリピン、日本、そして現地のハワイアンの文化が複雑に絡み合い、それぞれの食文化の要素が影響しあって生まれた料理の一例であることは間違いありません。
ハワイの家庭の定番おやつであるバター餅の作り方はとっても簡単!混ぜた後、型に入れて焼くだけなので、お子様でも作れます。インターネットで検索するとたくさんレシピが出てきますが、こちらではハワイアン航空のウェブサイトに掲載されていたハワイの人気シェフ、マーク・ノグチ氏のレシピをご紹介してみますので、ぜひ作ってみて。因みに、ハワイのスーパーでは「バター餅ミックス」も売っており、これを使うとさらに簡単に作れます。
バター餅ミックスもいろんな種類がある
- 無塩バター: 4オンス(約113g)
- 砂糖: 1と1/2カップ
- 卵: 5個(常温)
- もち粉: 1パウンド(約450g)
- ベーキングパウダー: 小さじ1
- 牛乳: 2カップ
- ココナッツミルク: 1缶(15オンス、450ml)
- バニラエッセンス: 大さじ1
- オーブンを325℉(160℃)にセットしておく。
- ボウルにふるいにかけたもち粉、ベーキングパウダー、砂糖を入れて混ぜる。
- 2に溶かしたバターを入れて、粉っぽさがなくなるまで混ぜる。
- バニラエッセンスを入れた牛乳を3に入れて混ぜる。
- 4に卵を一つずつ入れて、ココナッツミルクも入れて混ぜる。
- バターもしくはオイルを塗った型に入れ、アルミホイルでカバーして1時間オーブンで焼く。45分くらいで一度、竹串などを刺して焼け具合を確かめる。やや湿った感じだがバターの生っぽい塊がつかない程度が良い。
- 十分に(できれば一晩)冷まして召し上がれ!
ハワイの手軽なおやつとして人気のバター餅は、ほとんどのスーパーマーケットで購入できますが、今回は筆者が自信を持って厳選した2軒をご紹介します。
ハワイのバター餅といって絶対欠かせないお店がこちら、Lanikai Mochiです。何とバター餅だけを製造販売している専門店で、2020年にファーマーズマーケットからスタートし、カパフル通りの直営店は今年春にオープンしたばかり。なので、ローカルだけが知る新たなハワイグルメを試してみたい人は必見です。
ロゴがかわいいパッケージのLanikai Mochi
「うちのバター餅は一度食べると病みつきになる人ばかりなんです」そう自信を持って言うのはオーナーのユキオさん。30年以上前に友人からもらったバター餅が美味しくて、レシピを教わり奥様がポットラックパーティに持って行ったら、毎回リクエストされるほど大人気に。求められるまま作り続けていたら、「これを私たちに海外で売らせてくれないか」という話まで舞い込んで来たのだとか。その人気ぶりを自分で不思議に思い、試しに色々なお店のバター餅を味見してみたところ「うちのバター餅は比較にならないほど美味しい!」と確信。ご夫婦で航空会社をリタイヤした後、遂に本格的にビジネススタートに踏み切ったのだそうです。
オーナーのユキオさんとベイカーのステイシーさん
何でそんなに美味しく作れるのか秘訣を聞いてみましたが、白砂糖の代わりにケインシュガーを使っていること以外、特別な材料は使っていないそうです。「微妙なレシピの改良を地道に積み重ねていっただけ」と笑うユキオさん。確かに30年以上バター餅だけを作り続けてきて生まれたレシピなのですから、極上の味でない訳はないですね。
約16種類のメニューの内、店頭には毎日作りたての8種類が並ぶ。
そんなLanikai Mochiのフレーバーは全部で16種類。その中の8種類を日替わりで毎日店内のキッチンで焼いています。リリコイ、ウベなどが特に人気だそうですよ。個別の型で焼いているため外側がちょっと香ばしく、バター餅特有の中のもっちり感との対比が格別に美味しく味わえます。現在は、カピオラニ・コミュニティ・カレッジ(KCC)やカイルアのファーマーズマーケットの他、アラモアナやカハラのフードランド、ドンキホーテのカヘカ店、ダウントゥアース、ABCストアの一部店舗で購入が可能。でも、焼きたてのものを食べたいなら、ぜひカパフル通りの直営店へ。因みに、バター餅は常温で4日間、冷凍すれば1ヶ月ほど持つそうなので、お土産にすることも可能です。
1953年に創業し、70年以上ローカルに愛され続けている老舗の和菓子屋さん。「Mochi」をハワイで広めた和菓子店の一つでもあり、和菓子の伝統を大切にしながらハワイの多民族文化を融合させたハワイアン和菓子を製造販売しています。2020年にカリヒから現在のモイリイリの場所に移転したので、ワイキキからも車で約5分と行きやすくなりました。
かわいいウォールアートがあるFujiyaの店内
清潔感のある新しいFujiyaのキッチン。いちご大福も人気
Fujiyaのお餅は、バター餅も含め、店舗内からガラス越しに見られるキッチンで毎朝作られています。キッチンは広々としてとても清潔感があり、さすが老舗という安心感。因みに、Fujiyaではお餅の他にお煎餅も販売していますが、ハワイで煎餅を作っている会社はFujiyaを含めてもう2軒しか残っていないのだそうです。こんな本物のメイドインハワイの物が買える老舗を、地元民やハワイファンなら応援したいものです。
全部試してほしい6種類がどれも絶品なFujiyaのバター餅
さて、肝心のバター餅はどんな感じかというと、他店のものよりは若干柔らかい食感で、程よい甘さが美味しい絶品!ハワイのお餅は日本の弾力のあるお餅と比べ、ぷるっと柔らかく、やや求肥に近い食感のものが多いのですが、Fujiyaのバター餅は、正にそのハワイアン和菓子らしさを感じられます。この日お店に並んでいたフレーバーは、レギュラー、リリコイ、グアバ、チョコ、シナモンシュガー、季節物のパンプキンの全6種類。やはりこちらでも一番人気なのはリリコイだそうで、味わってみるとほっぺたが落ちそうな程、濃厚なリリコイの風味がたまらない絶品でした。店員さんのお勧めのシナモンシュガー味もバターの風味との相性がぴったりですよ。但し、バター餅は週に数日のみの販売とのことなので、事前にチェックしてから向かってくださいね。
20種類以上あるキュートなイラストのFujiyaオリジナルステッカー
また、余談になりますが、Fujiyaのレジ横にはオリジナルのステッカーの数々が並んでいます。デザインがとてもキュートで、お土産に喜ばれそうです。
アジアとハワイの文化が融合し、世代を超えて家庭の味として受け継がれてきたバター餅。今後、昔ながらの味を保ちながら、新しい息吹が吹き込まれてアレンジされていくのが楽しみな存在で、次なるハワイのトレンドスイーツになる予感がします。