モイリイリで見つけた”着るアート”アップサイクルブランド「Pitacus Chop Art」

ワイの若者もカッコよく着こなすアップサイクルブランド

日本の着物、インドの古布、世界各地のヴィンテージファブリック……集められた布たちが、ハワイで一点ものの服として生まれ変わります。ホノルル・モイリイリのアップサイクルアトリエ「Pitacus Chop Art(ピタカス・チョップアート)」は、布の歴史と作り手の想いが静かに息づく、知る人ぞ知る特別な場所です。

モイリイリに現れた、個性的なアトリエショップ

店内のディスプレイは頻繁に変わるので、それを見るのも楽しみの一つ

モイリイリのコミュニティエリアにあるPitacus Chop Art(ピタカス・チョップアート)。

店内に一歩足を踏み入れると、色と素材、そして縫い目の表情がまるでアート作品のように並ぶ空間が広がります。使われている素材は、世界各地から集められたヴィンテージファブリック、日本の着物や古布、刺し子布、インドのカンタ布など。どれも長い年月を経てきた布ばかりです。

それらを丁寧にパッチワークし、新しい服として再構築することで、世界に一つしかない洋服が生まれます。

このブランドを手掛けているのが、オーナー兼デザイナーの Lisa Weimken (リサ・ワイムケン)さんです。

ハワイ育ちのリサさんの作品は、南国らしい自由さとストリート感覚、そして布そのものが持つ歴史への深いリスペクトが融合したユニークなスタイルが特徴です。

ほとんどの服がワンサイズ

体型を気にせず着れるワンサイズ

Pitacus Chop Art(ピタカス・チョップアート)の洋服の特徴の一つが、ほとんどがワンサイズで作られていること。体型に合わせてサイズを選ぶという従来の服作りとは違い、着る人それぞれの身体や雰囲気に自然と馴染むシルエットになっています。

つまり、服が人に合わせるのではなく、着る人が服を完成させるという感覚。年齢や性別を問わず、多くの人が自由に楽しめるデザインになっています。

若い世代はもちろん、年配の方でもかっこよく着こなせるのも、このブランドの魅力です。

ニックネームから生まれたブランド名

「Pitacus(ピタカス)」というブランド名の由来を尋ねると、意外なエピソードが返ってきました。実はこの名前、子どもの頃にお父さんから呼ばれていたニックネームなのだそう。家族や友人の間ではよく知られていた呼び名で、ブランド名を決めるときに自然とその名前が浮かんだといいます。

自分の原点とも言える呼び名をそのままブランド名にする——。そんなストーリーにも、このブランドのパーソナルで温かい世界観が感じられます。

12歳から始まったものづくり

2025年モイリイリコミュニティセンターに移転し、さらに大きな店舗に

リサさんが洋裁を学び始めたのは、12〜13歳の頃。その学ぶ過程で大きな影響を受けたのが、同じくモイリイリにあるハンドメイド店Nui Mono のオーナー。

彼女はリサさんの師匠のような存在となり、多くのことを学んだそうです。

そしてなんと、16〜17歳で「Pitacus」というブランドをスタート。自分で作った服を販売し始めると、少しずつファンが増え、顧客もついていきました。

ブランドはその後成長し、2016年にカイムキで最初のショップをオープン。

そして2025年、現在のモイリイリのコミュニティスペースへ移転しました。

日本まで足を運び、着物を自ら買い付け

取材でお店を訪れた日は、ショップにはリサさんのシスター(姉妹)が接客していました。リサさんは、日本の着物や古布は、現地に足を運び、一点一点、状態や柄、風合いを確かめながら仕入れていると教えてくれました。

「気に入ったものでしか作らない」というその姿勢は、作品を見ればすぐに伝わってきます。布そのものが主役になり、無理にデザインを押し付けない。素材の魅力を最大限に引き出すことが、彼女のものづくりの根幹にあります。

日本の"BORO"文化を、ハワイから再解釈する

日本の「襤褸(ぼろ)」を、かっこいいファッション文化に再構築

Pitacus Chop Art(ピタカス・チョップ アート)の世界観を語るうえで欠かせないのが、日本の「BORO(ボロ)」の精神です。

布を繰り返し繕い、継ぎ足し、長い年月をかけて使い続ける日本の生活文化。その中から生まれた刺し子やボロの考え方は、「古いものを大切にする」「壊れたら直す」「直しながら使い続ける」という、人の暮らしに根ざした美意識でもあります。

正直に言うと、筆者自身も、リサさんの作品に出会うまで、BOROという文化の背景や起源について深く知る機会はありませんでした。

しかし彼女の服を見ていると、それが単なる"和風デザイン"として消費されているのではなく、布の時間や人の記憶を受け継ぐ思想そのものが、現代のファッションとして再構築されていることに気付かされます。

リサ・ワイムケンさんが行っていることは、まさにボロ・刺し子の精神を、21世紀ハワイという多文化社会の文脈の中で再編集している試みだと言えるでしょう。

ハワイはもともと、さまざまなルーツを持つ人々が交わり、文化が自然に混ざり合ってきた場所。日本の民衆文化、アメリカのストリート感覚、アートとしてのファッション、そのすべてが違和感なく溶け合っているのが、ピタカスの最大の魅力です。

「ハワイ育ちの感性」が生む、唯一無二の服

リサさんの作品に触れていると、「楽しくて仕方ない!」というのを感じます。目の前にある生地をどう生まれ変わらせようか、とわくわくしながら製作しているんだろうなというのが自然と想像ができ、そのエネルギーが伝わってくるのです。

ハワイ育ちならではの自由さと、既成概念にとらわれない発想。若者が着てもかっこよく、年配の方が着ても自然に馴染むデザインは、流行や年齢を超えた普遍性を感じさせます。

それは、「売れる形」を先に作るのではなく、「自分が本当に好きなもの」「自分が美しいと思えるもの」を基準に、ものづくりを続けているからこそ生まれる強さなのでしょう。

旅の途中で立ち寄りたい、"作品と人に出会える場所"

棚にもたくさん気になる雑貨があり、まるで宝箱のような店

ピタカスは、ただ洋服を買う場所ではありません。布の歴史、作り手の想い、そしてハワイという土地が持つクロスカルチャーの魅力を、静かに体感できる場所です。

店内ではワークショップや、他のアーティストによるポップアップイベントが開催されることもあり、訪れるたびに新しい出会いがあるのも魅力のひとつです。

営業日は木曜から日曜まで。さらに、毎週お店の休みの日には、その週の新作がインスタグラムで紹介されるそうなので、訪れる前にチェックしてみるのもおすすめです。

もしモイリイリ周辺を歩く機会があれば、ぜひ足を運んでみてください。

きっとそこには、旅の思い出になるだけでなく、「自分らしく着る」という新しい視点を与えてくれる一着との出会いが待っているはずです。

モイリイリの静かな通りに、世界に一着しかない服が生まれる場所がある——それがPitacus Chop Artです。

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ABOUT WRITER
Miki Cabatbat

フリーランスライター&ポッドキャスター。ハワイ在住歴12年。東京のラジオ局勤務時に、ハワイから特番を放送したのがきっかけでハワイ好きに。2010年に意を決してハワイ留学をし、その後結婚し定住。2004年からはフリーランスライターとしても活動を始め、さまざまな雑誌/書籍/Web等で執筆。

Podcast 「ハワイの主婦発信★海外生活リアルRadio」配信。2021年11月 Kindle本「アフターコロナの海外留学 : ハワイ生活案内」をリリース。